補習ほぼ確

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顧客信頼性エンジニアをしていますと言い張って一年が経った

この記事はGMOペパボエンジニア Advent Calendar 2021 9日目の記事です。

現在、前回の冒頭でも話していた CRE をやっています。最近は以下のイベントで発表したようにこんな活動をしているというのを外に発信できる余裕も多少出てきました。

tech.pepabo.com

ということで表題について、CREをやりはじめて丸一年が経過した。
今書かないと今後書かない気がするので、顧客信頼性エンジニアをしていますと言い張って、自分に対しての気付きを振り返って書いてみることにする。

この記事を読んだ人にCREをやってもらいたいなという意図があって書くわけではなく、こういう人も居るんだなという感じで読んでいただければと思います。

きっかけ

事業部で CRE をこれからやりますと宣言する去年の7月の3ヶ月くらい前。その時点でいちWebエンジニアとして、事業部で同じプロダクトを2年担当していたわけだが飽きを感じてきたのもあったし、これからこのプロダクトで何を軸にしてやっていきたいのだろうと煮詰まっていた。

上司にも相談し、ざっくりと自分の意思は「ユーザの成長支援を叶えるminneのプラットフォームとしての価値を高めるようなプロダクトの改善指揮を取る立場をやってみたい」つまり PdM, PO のジョブをやってみたい「でもエンジニアも好きだしもっと技術力は上げたいのでやりたい」というものだった。

その時 CRE という考え方について私の認識と言うと SRE がそもそもあり、社内でも カラーミーショップを提供する EC 事業部に CRE チームがある というのを認識していたのでぼんやりと知っている、程度のものだったが上司と 1on1 を重ねてそれを minne でも私がやってみるのはどうだろうか、ということになった。

その過程で以下のはてなを始め他社の CRE についてどういう理念を持って活動しているのかを調べてみて、自分のエンジニアとしての行動傾向的にも「プロダクトに対する顧客の信頼性を向上する」はそぐう内容だったので、CRE の考え方と自分の目的は合っているかもしれないということで、思い立ったが吉日ということで始めることにした。

developer.hatenastaff.com

当然、1人で始めるが「顧客信頼性エンジニアリングをする人のチーム」として今までの体制から外れるので、チームの理念を固めて周知した上でやりたい、ということになり以下テックブログにもあるようにチームのミッションを決め、部内に共有した。

tech.pepabo.com

自分のことを理解した一年

上で書いた通り、当初はプロダクトオーナーもプロダクトマネージャーもエンジニアも全部やりたいと言っていたのが CRE となり、自分の中で新しいロールが見つかった。見つかったというか、むしろ見つけるのはなりますと宣言したここからなのだけど、なりますと言ったので人にも認めてもらえるようなロールの人間になるぞ。という心持ちで動き始めた。

その勢いで一年が経過してみて、「自分が仕事をする上で大事だと思っていること」がはっきりした。そして CRE やってますと言い張って動いてみて、改めてこの選択は自分には合っていたのだと思っている。


自分が大事だと思っていること、はこの3つになる。

  • 負けず嫌いでいる
  • 誠実でいる
  • 誇りを持つ

負けず嫌いでいる

中途で今の会社に入り配属されて半年程も経って実感したのが「想像していたより周りには凄いエンジニアしかいなくて、自分が周りより優れている点は一つもない」というものだった。が、そうやって打ちのめされている時分「チームには多様性があった方がいいし、誰々と全く同じように強くなろうとは考えなくていいのでは」と 1on1 で先輩に声をかけてもらった。

新卒の頃でも辛くなったらそういう気持ちでやってたかもしれないというのを思い出したので この点において自分よりチーム内でスキルが高い人はいても、自信持って任せてと言えるレベルに自分を引き上げよう というベクトルに頭を切り替えた。

私は今の仕事の一つで、ユーザからの問い合わせの解決が好きだ。ユーザの問い合わせを直接見ること自体前職では無かった経験だったので当初新鮮でもあった。最高にイケてる設計を考える とか 文句を言わせない綺麗なコードを書く のは苦手だが問題解決やその解決の道筋を考えるのは好きだし、お困り事に巻き込まれるとそれまで知らなかった領域を無理矢理叩き込むことができて、それが楽しいからだと段々わかってきた。
この問い合わせ解決というものはカスタマーサポートだけで解決できない、技術的面での調査が必要になってくる問い合わせをエンジニアが解決するというものだが、以前はそのエンジニアの担当者は固定されているわけではなく、部内のエンジニアにランダムに割り振られた。
そのため問い合わせ対応をしうるメンバーは複数いるのだが、この仕事において「解決の道筋をスマートに示し、気持ちよく終わらせたい。特に自分に対応してもらって良かったと思われたい。」という気持ちが芽生え、人が担当してる問い合わせでも見に行って手を出すというのをよくしていた。そもそものモチベが 一緒に仕事する人が喜んでくれること で、そして評価されたいという欲があるからだと思う。

当初打ちのめされたように 誰々と全く同じように強くなろう とは考えなくなったが、そうやって次第にユーザのサポートをすることでは自分が一番でありたいと考え仕事をするようになった。 多分この辺を好きになってちまちまとやっていなかったら CREの考え方と自分の目的は合っているかもしれない と思ってこの立場に置くことはなかったかもしれない。

また、上で CREなりますと言ったので人にも認めてもらえるようなロールの人間になるぞ。という心持ちで動き始めた。 と書いたが、活動を初めてずっと頭にあったのが「成果出さないし元に戻すか」と絶対に言われたくない。というものだった。”成果”としては他のチームに見劣りするかもしれないけど、着実に今やるべき・求められることをこなす。そういう気持ちで色々やっていたら、チームとしての働きをみとめてもらえたので存続できている。また前より多少自信が持てるくらいには成長できたと思う。

...なので、自分の負けず嫌いは CRE チームをつくり、存続させること に大きく影響したと思う。

誠実でいる

CREを始めるにあたってそれまでと変わった点の一つに周囲のメンバーの違いがあり、新機能開発などの施策の担当エンジニアだった時にコミュニケーションをとるメンバーは、開発ディレクター・バックエンド/クライアントサイドのエンジニア・デザイナーが主だった。CREとして 顧客(ユーザ)の minne というサービスへの信頼性が高い状態を実現する には、ユーザに一番近い位置で仕事をしているカスタマーサポート(以下、CS)と連携して課題解決することが必要であり、サポート力も底上げできるようにこれまで以上にCSと円滑なコミュニケーションをはかり、意思決定していくことが重要だった。

今まで関わることが少なかったメンバーと仕事をうまく進めるには、当然自分のことを信頼してもらわなければならない。

CSとCS以外のメンバーでは福岡支社と東京本社で物理的な距離もあり、会ってコミュニケーションがとりにくい状況下で「なんかこいつのことは信頼していい」と思ってもらうにはオンラインで交わされるやりとりと仕事の成果、その2つしか手段がないわけで、そこで第一にやるべきことは「一つ一つのことに誠実に対応する」だった。
今の自分のスキルでできないことはきちんと伝え、その上でできることを模索する。エンジニアじゃない相手にも分かりやすい説明をする。相手の提案をやらない方がいいと断るならその背景をきちんと説明する。相手に委ねたコミュニケーションをしない。決めた期日は守る。書き出してみるとごくごく当たり前のことばかりだけど、それでも意識しないとおざなりにしてしまう。

そしてエンジニアとCSのように職種が違う場合、ここまでが自分の仕事の領域でそこから先は関与しない後はそっちでやって、と線引きする場面を見たりやってしまったりしてきたが、特にこの 線引き は発生しないように心がけている。ユーザのため、解決したい問題が何かあってそのために行動しているのは相手も自分も同じだし口出しをしてはいけない領域はない。お互いの立ち位置に逃げず前向きな議論ができる環境が理想的だし、そういう居心地のよい場じゃないと楽しくなくてつらい。今の主なコミュニケーションの場は Slack のチャンネルひとつだが、そういう発言の生まれやすい環境づくりも新しくチームを作る時に大事なことだと実感した。

また、共に働くメンバーはもちろん「誠実でいる」ということは利用ユーザに対しても意識するようになった。

上で問い合わせの解決が好きと書いたが、問い合わせひとつとってもユーザの生の声というのは様々で、辛辣な意見ももちろんある。この人は状況説明して自身の意見を伝えるのが上手いな〜と舌を巻くこともある。問い合わせを見る際は合わせてユーザの行動ログを時系列で追っていくということをするが、私にとって問い合わせで知るユーザの行動や声というのはとても刺激的で、閉じ籠もってコードを書いて投げ出したい時があっても、「こんな改修一つで何が変わるのか」と思ってシステムに手を入れる時があっても、その先に生活の中で自分の手が入ったプロダクトを触っている人間が本当にいる、というのをちゃんと実感できる。

「生活の中で自分の手が入ったプロダクトを触っている人間が本当にいる」と思うと、じゃあ親身になってできれば手間をかけずに解決してあげたいと感じてしまうもので、どうしたら早くお困りごとが解消されるだろうか?と思って誘導内容を考えたりコミュニケーションすることは楽しい。
CREを始めてしばらくして組織体制の変化により、問い合わせの技術的調査・CSとのコミュニケーションはエンジニアという立場では自分が中心になり対応することとなり、以前にまして自分の対応がCS・ユーザに与える影響は大きくなった。
問い合わせをくれたユーザにはまだサービスを使い続けて欲しい。間で対応してくれているCSにも、1日に多くの問い合わせをさばく中で(自分の関わるひとつの問い合わせで)負担を感じてほしくない。その思いが強くなったので、対応が相手にとって満足のいくものであるように誠実でいることをより心がけるようになった。

誇りを持つ

エンジニアになって、大事なリリースの前にバグを出しまくったり、できることが増えてもできないことの方にしか目が向かず「自分はできないことばかりの人間で仕事は辛い」と先輩に弱音を零したことがあった。その際「何千何万の人が使うアプリを新規開発したり保守するのって凄いことやってるんだよ。自分はそんなことをやってるんだって、お互い技術者として誇り持ってやって行こうよ」と言われ、辛い時によく思い起こしている。

"誇りを持つ"というのはつまり、自分がなぜそれをしないといけないのか、自分が人にどんな影響を与えるかを理解しているということだ。と以前読み、
「誇りを持って行動しないと責任感も生まれてこない。」と思うようになった。

仕事の進め方やスキルで周囲から自分を信頼してもらいたいのに、「自分はあれができない、こんなことしかできないけど….」という思考だと向けてもらえる信頼・期待を自分から遮断することになってしまう。できないことが沢山あっても、それは受け入れてできるようにしていくのと同じくらい今の自分にできることに誇りを持ち仕事をする。1人で自分を奮い立たせるためにその気持ちを強く持っていたが、どんな仕事をしていてもこれは大事だよなぁと思う....。

最後に

ここまで書いてみてあらためて感じるのは、新しいことを始めてみると(上の内容は良い面寄りに書いているが)良い面でも悪い面でも自分が一体どういう人間なのかを見つめる機会になるということで、来年はまた別の課題も出てくると思うがどこを直して伸ばすべきかを知れたと思う。

なのでまとまりもなく月並みな締め方になってしまうけれど、新しいことに飛び込むと自分が当初目的にしていたもの以上に得られるものがあり、かつ苦労も含めて充実した時間になるので来年も飛び込むぞという気持ちで新年を迎えたいと思います。