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フェルメール展の感想

先月フェルメール展に行って来た。

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www.vermeer.jp

上野の森美術館... 昨年怖い絵展で朝から2~3時間並ばされた思い出でなんとなくここに来ると入場まで長時間並ぶのは当たり前、みたいな印象がついてしまった。
私が行ったのは月曜の夕方なので入場制限もあるしまぁそんな混まないだろうと思ってたけど、普通に人多かったなぁ。でもあれだけの点数を一度に見れたので、鑑賞後は全然並ぶ時間もお金も惜しくないという感覚。

以下の展示構成で、17世紀オランダの絵画を鑑賞。1650~80年くらいの作品が多かった。

  1. オランダ人との出会い:肖像画
  2. 遠い昔の物語:神話画と宗教画
  3. 戸外の画家たち:風景画
  4. 命なきものの美:静物
  5. 日々の生活:風俗画
  6. 光と影:フェルメール

画のそばに解説文がない代わりに配られるガイドに解説が詳細に載っていてとても良かったのでどこの展覧会もこれがスタンダードになってくれるとうれしい... あとで見返せるし。

印象に残った作品達

  • パウルス・モレールセ / ヴィーナスと鳩

ローマ神話の愛の女神ヴィーナスを若い婦人が演じており、右手には矢、左手には鳩を載せて居る。
この矢は愛の神クピドが放ったもので「心臓を射抜かれると人は恋に落ちる」ということを象徴していて、鳩もまた愛の象徴だそう。
分かりやすく綺麗なロマンチックな絵で、ヴィーナスの頭上で咲いている赤いバラと相まってよりそれを際立たせている。(バラはヴィーナスの象徴)
ニコラス・マースの『窓辺の少女、または「夢想家」』も窓から見える少女の周りにみずみずしい桃とアプリコットが描かれていてちょっと近い雰囲気。こちらも美しかった。

この「東方三博士の礼拝」はもっとも頻繁に描かれた宗教主題の一つらしい。3人の賢人がイエスの誕生に贈り物を携えてやって来る、という絵なのだけどこの絵でイエスは幼子として描かれていて、"理想化されていない" "実際に居るような赤ん坊の姿" で描かれている、というのが解説文にあった。
「東方三博士の礼拝」で調べるとだいたい登場人物の姿構図が同じなのだけど、これで思い出したのが以前読んだ本で、新しい宗教を広めようとする時には祭日だったり崇拝の儀式だったり、他の宗教の要素を取り入れたりするのがあって、信仰する神の姿も同じようにされたという話。
キリスト教での神の姿は「白い顎髭を生やした老人」であることが多いが、これは人々がキリスト教の神はどんな姿をしているのかというのを教会に尋ねた時に、もっとも人々に馴染みのあるギリシャ神話に登場するゼウスの姿を答えたというもの。
あえて知られている神の姿ではなく、「理想化されていない姿」を描く、それが頻繁に取り上げられたのは何故なんだろうというのが気になった。
理想化されていない姿を描いて、民衆に広めることでより神を身近に感じたい、とかそういう背景があったりするんだろうか。

  • シモン・デ・フリーヘル / 海上のニシン船

作者は17世紀における重要な海洋画家のひとりだそう。船と漁師達を丁寧に描く一方で霞んだ光や湿気のある海の様子が圧巻。
海洋画何点かあったんだけど、どれも不安定な気候を表現しているのが面白かった。
何となくイギリスやフランスって曇りが多い印象だけどオランダもそうなのかな。しかし悪い天候でも光の表現がどれも素晴らしい。
あと自分の故郷が曇りの日が多いので「気候が不安定だけど美しい画」なんて本当に...良い。

神話画、宗教画が特に好きなのだけど「洗礼者ヨハネの斬首」、「ユーディトとホロフェルネス」がモチーフの画よく見るなぁという感想。どちらも緊迫した雰囲気が好き。

1~5章までで感じたこと

上記の肖像画から風俗画まで一通り見て気になったのが、肖像画のモデルだったり風俗画で描かれる市民がとにかく裕福な印象を受ける。
身なりとかそれに使われている色の豊富さや食べ物。ちょっとした貴族階級でも構えている家がすごく現代的に感じる。
1600年代ってこれってオランダってそんな裕福な国だったっけ?と思ったら、ネーデルラント諸州の独立戦争である八十年戦争(1500年代後半〜1600年代前半)の終わりから17世紀にかけてオランダ黄金時代とのちに語られるほどだった。

スペインからの独立を宣言したネーデルラント連邦共和国は当時のヨーロッパで最も富裕な国で、貿易、学問、芸術の最先端国家だった。(Wikiより)

そういえばそんなこと習った覚えがあるけど、世界史上でそんな重要じゃなかったので(自分の中で)忘れてた。こうやって昔学んだこととリンクするのも鑑賞してて楽しい瞬間。
よく見る1700年代以降のフランスの風俗画とか、民衆の姿はそれはもうひどいのに(記憶)。ひとつの国のひとつの時代だけ切り取って見てるから尚更だけど違いがすごい。
この時代のオランダの繁栄ぶりがわかる。

フェルメール作品

展覧会の目玉!作品は全部で8点。(来年1月以降は1点追加展示される模様)
自分が思いつくフェルメールの作品、「牛乳を注ぐ女」真珠の耳飾の少女くらいしかなかったのだけどただでさえ現存する作品が少ないのにそのうちの8点も鑑賞できて、やはり生で見る画は想像を絶する美しさだった。
新たに知った作品では「取り持ち女」「手紙を書く女」「マルタとマリアの家のキリスト」が印象深い。だいたいどれもポストカード買っちゃったけど...。

Wikiも見てると、フェルメールは "左から光が差す室内に女性が立っている" という画が多い。その光の表現がもう自分の語彙でうまく書けないけど、この時代にこんな精緻な、繊細で柔らかい光を表現することができるなんて考えられない。
会場の中で作品自身の光の描き方をもってまさに浮かび上がって見える、神々しい画だった。
そして「手紙を書く少女」の少女とかもだけど、画の中に悲観したような人物が全然居ない。かといって幸福そうな顔をしているかという訳でもないのだけど、現代に通じるような時代、人生を達観してるように描かれている人物が多いなという印象。
それはやっぱり、裕福なこの時代に描かれているからというのもあるのかなぁ。
こんなに美しいのに、親愛の情を持って見ることができるそんな魅力がある。

5章まで鑑賞した時点でもかなり満足したし、フェルメールの作品はいくらでもネット上で見られるものではあるけど、やっぱりこの機会に生で見られてよかった。圧巻だった。
www.artagenda.jp

画を見る楽しさ、歴史から再発見する楽しさ。贅沢だった。
「牛乳を注ぐ女」の格好してるミッフィーもやはり予約した!